基準となる電流・電圧を作成するための幾つかのバイアス回路の特徴をまとめます。
バイアス回路を選ぶ際の参考になればと思います。
BGRやConstant-gm回路が基本だと思いますが、要求される精度や用途次第では抵抗分圧を使用する場合もあります。
BGR (Bandgap Reference)
もっとも精度がよく、PVT(Process/Voltage/Temperature)依存性がないバイアスを作れるのがBGRです。
多数の回路に電流を配る際にはまず間違いなくBGRが選ばれます。
特徴としては、
- PVT依存がない電圧が作成可能。
- 抵抗プロセスのみに依存する電流や、外付け抵抗を使用してPVT依存がない電流を作成可能。
- 温度に比例する(PTAT: Proportional to Absolute Temperature)電流、電圧も作れる。
一方で他のバイアス手法に比べてコスト(設計工数、面積、消費電流)は高めです。
また、複数の安定な動作点が存在するため、所望の動作点で動作させるためにスタートアップ回路の設計も必要になってきます。
Constant-gm
アナログ回路においてMOSのトランスコンダクタンス$g_m$は重要な役割を担います。
例えば、負荷抵抗Rのソース接地の小信号利得は$g_mR$であり、$g_m$が電源電圧に依存しなければ利得も電源電圧依存なく作ることができます。
このようなバイアスを作るのがConstant-gm回路です。
- MOSの$g_m$がPVTに依存しないようなバイアス電圧を作ることが可能
- 比較的単純な回路構成で実装可能
Constant-gm回路は一定の$g_m$を作るため以外にも、回路構成が単純なため簡易的なバイアスとしても使用することができます。
こちらもBGRと同様にスタートアップ回路が必要となります。
詳細は別ページでまとめる予定です。
抵抗分圧
単純に電源-グラウンド間に抵抗を入れて分圧するだけの構成です。
- 出力電圧が電源電圧に完全に依存する。
- プロセス依存や温度依存はない。
- 消費電流を抑えるためには高抵抗が必要。そのため面積をとる。
MOSの動作点を与えるためにこの構成を用いるのは現実的ではないように思いますが、
たとえばcommon-mode voltageとして$V_{DD}/2$を作るといった目的のために用いることはできます。
MOS分圧
ダイオード接続したMOSを直列に並べて分圧する構成です。
- 抵抗分圧と同様に、出力電圧は電源電圧に依存する。
- プロセス依存や温度依存は多少あり。
- 低消費電流かつ小面積で実装可能。
分圧で出力電圧を作っているので抵抗分圧と同じように電源電圧に依存してしまいますが、
何より低消費電流、小面積というメリットがあります。
そのためsub-nWといった超低消費電力での用途にも使用されているようです。
これら以外の構成で有用なものがあれば追記していきたいと思います。
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