CMOSカレントミラーの構成まとめ

前回(CMOSカレントミラーの基本)はカレントミラーの基本原理について書きました。実際の応用では必要な電流精度に応じてカスコードカレントミラー構成を用います。また、カスコードカレントミラーにしても幾つかのアーキテクチャがあります。
ここではそれらの構成をまとめてみました。

出力抵抗について

電流源において微分出力抵抗$R_{out}=V_{D}/I_{D}$が高いことが重要です(実際には微分ですが微分記号を省略したり、微分抵抗をそのまま抵抗と呼んだりします)。この式を変形すると、
$$I_D=\frac{V_{D}}{R_{out}}$$
となり、$R_{out}$が大きければ大きいほどドレイン電圧$V_{D}$の変化に対して電流の変化が小さいことが分かります。つまり、より理想的な電流源であると言えます。またカレントミラーにおいてもより正確に電流をコピーすることができます。

以下では特に出力抵抗に注目して各構成についてまとめています。
なお以下の図はNMOSを使っていますが、全ての構成で同じようにPMOSを使うことができます。

基本のカレントミラー

最も基本的な構成です。この場合の出力抵抗は単一のMOSのチャネル長変調効果による抵抗$R_{out}=r_{o1}$となります。
出力抵抗は比較的小さく高精度の用途には使いません。

カレントミラー

カスコードカレントミラー

カスコードカレントミラーはMOSを2段にカスコード接続することで出力抵抗を$R_{out}=g_{m3}r_{o3}r_{o2}$と$g_{m3}r_{o3}$倍することができます。プロセスやバイアス点にも依りますがおよそ$g_m r_o\gt 10$なので、カスコードカレントミラーにすることで出力抵抗を10倍以上にすることができます。

カスコードカレントミラー

欠点としては$M3$のドレイン電圧の最小許容値が大きいことです。$M3$が飽和領域にあるためには、
\begin{eqnarray}
V_{D3} &\gt& V_{G3}-V_{TH3} &\\
&=& V_{GS0}+V_{GS1}-V_{TH3} & \\
&=& (V_{GS0}-V_{TH})+(V_{GS1}-V_{TH})+V_{TH}
\end{eqnarray}
となりオーバードライブ電圧2つ分と閾値電圧という高い電圧が必要です。そのため、多くの場合は低電圧カスコードカレントミラーを用います。

また、上図では2段のカスコードですが、さらに縦にMOSを接続して3段以上のカスコードにすることも可能です。ただし、その場合はさらに電圧余裕がなくなってしまうため2段以下で構成するのが普通です。

低電圧カスコードカレントミラーその1

低電圧カスコードカレントミラー その1

$M4$のサイズを調整することで$V_b=V_{GS2}-V_{TH2}+V_{GS3}$とすることができます。このとき、$M3$が飽和領域であるための条件は
\begin{eqnarray}
V_{D3} &\gt& V_{b}-V_{TH3} & \\
&=& V_{GS2}-V_{TH2}+V_{GS3}-V_{TH3}
\end{eqnarray}
となりオーバードライブ電圧2つ分で済みます。この構成は低電圧カスコードカレントミラーと呼ばれます。出力抵抗は通常のカスコードカレントミラーと変わりません。

欠点としては、2本の参照電流$I_{REF0}$、$I_{REF1}$が必要なので消費電流が少し増えてしまいます。また、そのための配線も追加で必要となります。

低電圧カスコードカレントミラーその2

低電圧カスコードカレントミラー その2

1つの$I_{REF}$で$M0$と$M1$両方のゲート電圧を生成する構成です。抵抗の値を
$$I_{REF}*R=V_{GS1}-V_{TH0}$$
を満たすように選べば、
\begin{eqnarray}
V_b &=& V_{GS_0} + I_{REF}*R & \\
&=& V_{GS0}-V_{TH0}+V_{GS1} & \\
&\sim& V_{GS2}-V_{TH2}+V_{GS3}
\end{eqnarray}
となり、低電圧カスコードカレントミラー構成その1と同じように最低限の電圧でバイアスできます。

バイアス電流が1本で済む一方で、抵抗の製造ばらつき分を考慮して$V_b$を余裕を持って設定する必要があります。

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