アクティブインダクタ(active inductor)とは

アクティブインダクタ(active inductor)は能動素子(active component)であるMOSFETを用いてインダクタのような特性を実現するMOSFETの構成です。

インダクタという言葉の通り、周波数に比例して抵抗値が増えていきます。
これを聞いてアクティブインダクタを使って高周波まで高い利得を維持できる広帯域のアンプが設計できるのではと期待されるかもしれませんが、残念ながらそんな都合のいいものではありません。

実際には低周波での抵抗値を下げて、相対的に高周波で抵抗値が高くなるように見せているだけです。単に増幅するのではなく、イコライザなどの用途で波形を整形する目的で使われるものです。

よく見る構成は以下のようにアンプの負荷としてアクティブインダクタを使用しているものです。通常、M1、M2共に飽和領域で動作させます。

CMOSアクティブインダクタ

低周波では容量Cは見えず、Voutの小信号的な揺れがそのままM2のゲート($V_{G2}$)揺れとなります。したがってM2はダイオード接続負荷と同等となり、利得としては

$$\frac{V_{out}}{V_{in}}=\frac{g_{m1}}{g_{m2}}(低周波)$$

一方で高周波では容量Cが効き、$V_{G2}$の揺れはVoutの揺れをRとCで分圧したものになります。高周波の極限では$V_{G2}$は全く揺れず、PMOS電流源負荷と同等の負荷($r_{o2}$)となります。

$$\frac{V_{out}}{V_{in}}=g_{m1}r_{o2} (高周波)$$

以上をまとめると、利得の周波数特性は下図のようになります。

低周波では本来電流源負荷で得られるはずの利得をダイオード接続負荷の利得まで落としていています。周波数が$f_c=\frac{1}{RC}$のあたりでダイオード接続負荷から電流源負荷に切り替わっていきます。

イコライザのように相対的に高周波で高い利得が得られればいいというアプリケーションには適用できますが、単に高い利得が欲しいというだけであれば電流源負荷の方が優れています。電流源負荷とした場合、出力コモン電圧が決まらずフィードバックが必要となってきますが、これが不要な差動アンプの構成もあります。

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