BGR回路(Bandgap Reference)の原理

スタートアップ回路

前述したように、BGRは二つのBJTブランチに流れる電流と電圧が等しくなるところが安定な動作点となりますが、BGRが全く電流を流さない状態でもこの条件を満たして安定動作してしまいます

例えば、電源起動時などで一瞬でもこの第二安定点で動作してしまうと電源が完全に立ち上がった後でも第二安定点から抜け出せず、BGRは電流を流さないままになってしまいます。これを防ぐために必ずスタートアップ回路を用意します。

安定動作点の解析方法の一例として、下図のようにセルフバイアスカレントミラーの構成においては、NMOSカレントミラーのゲート電圧VNをパラメータとして各カレントミラーの電流$I_1$、$I_2$を測定します。$I_1=I_2$となるところが安定動作点です。

BGR startup circuit

スタートアップ回路がない場合(青色実線)、VN < 0.4Vで$I_1=I_2=0$となってしまい期待しない安定動作点ができてしまいます。これを防ぐためにスタートアップ回路は$I_2$が小さくなったときにPMOSカレントミラーから$I_2^{\prime}$の電流を引き抜き、回路をONさせます。これにより$I_1$と$I_2^{\prime}$の交点は所望の一点だけとなり、期待しない安定動作点がなくなります。

スタートアップ回路の動作をもう少し詳しく描いておきます。

VNの電圧が低く、NMOSカレントミラーがoffしている時を考えます(下図左)。このとき、スタートアップ回路もまだ動作していないとすると、PMOSカレントミラーもoffしています。そのためM4もoffです。

M4がoffなのでプルダウン抵抗$R_s$の方が抵抗値が低く、インバーター入力はLとなります。したがってM5のゲートがHとなり、スタートアップ回路が起動してPMOSカレントミラーから電流を引き抜きます。

BGR startup

その結果、PMOSカレントミラーがonすることになります(上図右)。$I_2$がコピーされて$I_1$にも電流が流れるため、NMOSカレントミラーもonし、BGRが正常な安定動作点にて動作します。

これも重要なことですが、BGRが正常動作しているときはM4はonとなるので、インバーター入力はHとなり、M5のゲートはLとなります。そのためM5はoffするので、スタートアップ回路はBGRが正常動作しているときには何も影響を与えません。

なお、ここでいうL, HとはMOSがon, offする程度の低い電圧あるいは高い電圧のことを表現しています。

ここで描いたスタートアップ回路は飽くまでも一例で、他にもいろいろな構成が考えられますが、第二安定点を作らないという考え方は構成に依らず基本となるものです。

また、BGRとして重要なのはPVTばらつきを考慮しても確実に起動することですが、そのためにM4と$R_s$のバランス調整だったり、スタートアップ回路が誤動作しないかなどの検討が必要で、それによってスタートアップ回路の構成も調整していくことになるかと思います。

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